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男は、台湾に住む亡命チベット人2世の古物商、タシィ・ツゥリンさん(38)。
「私はオリンピックに反対しているわけではない。
ただ、チベットの惨状を全世界に訴える絶好の機会だと思っている」。
この日朝、沿道の別の場所でチベットの旗を広げていたタシィさんは記者にそう話していた。
タシィさんは、中国のチベット侵攻後の1959年、チベットからインドに亡命し、その地で生まれた。
紛争は直接経験していないが、父親の壮絶な体験がタシィさんの心に刻み込まれている。
父親は紛争の最中、政治的理由で中国公安当局に拘束され、死刑を宣告された。
しかし執行の前日、一か八か、小さな窓から絶壁に向かって飛び降りて脱走、一命を取り留めた。
その後、夫婦で当時7歳だった兄を連れて2週間かけて、命からがらヒマラヤ山脈を越えたという。
チベット独立は両親の悲願でもある。それを実現するためには、残りすべての人生を犠牲にする覚悟がある」