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陸自ヘリ部隊 なぜ「丸腰」の派遣なのか


大洪水被害に見舞われたパキスタンに向け、政府は国際緊急援助隊として陸上自衛隊
派遣する方針を決めた。週内にも中核のヘリコプター部隊が現地入りする。

 
7月末にパキスタン北西部で発生した大洪水の被災者は推定で人口(約1億8千万人)の
1割を超えた。今月初めには日本人観光客8人がパキスタン軍のヘリに救助されている。
日本がパキスタン政府や米政府の要請を受け、陸自ヘリの派遣に踏み切ったのは当然の判断
である。

 
洪水の被害はインダス川下流の中部から南部へと広がっている。小麦や米、サトウキビなど
の被害は深刻だ。コレラ患者も確認された。陸自ヘリ部隊が社会不安を払拭する力となるよう
期待したい。一方で、派遣に伴う重大な懸念を指摘しておきたい。
ヘリ部隊の隊員が「丸腰」で現地に赴くことに対してである。

 
自衛隊を派遣する場合、紛争に起因する災害には国連平和維持活動(PKO)協力法で、
それ以外の自然災害などには国際緊急援助隊派遣法で対応する。
いずれも憲法解釈の判断から武器の使用に数々の制約がある。
今回の根拠となる緊急援助隊派遣法では、自衛隊は一切の武器を携行できない。

 
パキスタン北西部に拠点を置くイスラム武装勢力は隣接するアフガニスタンの旧支配勢力
タリバンと連携している。当然、外国の援助には強い反発を示す。

 
陸自ヘリの活動地域は比較的治安が安定した最南部のカラチ周辺になるもようだが、被災地は
武装勢力の活動域と重なるところが少なくない。

 
PKO協力法に基づく派遣の場合は正当防衛や緊急避難のほか、「自己の管理下に入った者」を
守るために武器を使用できる。
他国の軍隊は守れないなど不備はあるが、今年1月のハイチ地震ではPKO協力法に基づいて
自衛隊を派遣した。
パキスタンの治安状況を考えれば、最低限同様の対応をとるべきではなかったか。

 
先の通常国会で、自民党は武器携行を可能とする内容を盛り込んだ国際緊急援助隊派遣法の
改正案を提出した。にもかかわらず、民主党の理解は得られず、委員会での議論もなされなかった。

 
政治の不作為によって十分な災害救援ができず、まして自衛官にしわ寄せがいくようなことが
あってはならない。

→ http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100817/plc1008170328004-n1.htm