『傷痕のメッセージ』 知念実希人(著)
息をのむ展開と瞠目のラスト!医療×警察ミステリの新地平!!
「死んだらすぐに遺体を解剖して欲しい――」医師の千早が父の遺言に
従い遺体を解剖すると胃の内壁に暗号が見つかった。
28年前、連続殺人事件の犯人を追うため父が警察をやめたことを知った
千早は、病理医の友人・紫織と協力して、胃に刻まれた暗号を読み解こ
うとする。時を同じくして28年前の事件と酷似した殺人事件が発生。
現在と過去で絡み合う謎を、千早と紫織の医師コンビが解き明かす!
以下、ネタバレはしません。
お前また「知念実希人」かよォ~、と言われそうですが、サラブレッドに
例えるなら知念作品は「クズの出ない血統」というのでしょうか、兎に角
ハズレがありませんね。
本作で面白いのが、著者の主力作品である「天久鷹央の推理カルテ」
シリーズに出てくる「桜井刑事」と、1行だけ小鳥遊医師が出てくるとこ
ろでしょうか。初めの舞台設定で「純生会医科大学病院」で「おや?」と
思いましたが、そうでしたね。
30代の頃は一番「本」にハマッていた時期で、それこそ塩野七生さんの
「ローマ人の物語」とか、浅田次郎さんの純文学からピカレスクもの、
司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」に至っては感動の余り何度も読み返し、
安部公房さんとかフランツ・カフカの日常離れしたディープな世界に
どっぷりと浸かっていまして、推理小説などと馬鹿にしていましたが、
東野圭吾さんを知りミステリー・推理小説にもハマッてしまいました。
本作のデキも上々で、ストーリーテリングに展開がサスペンスとしても
秀逸で、次のページをめくるのが楽しみというか、電車を乗り間違える
くらいでした、いやホントに(失笑)。
殺人犯は途中から、ほぼ2人に絞られるのですが、最後に明かされる
主人公・千早の数奇な運命のドンデン返しには驚きました。
なるほど、そうだったのか!? って感じです。
ただ惜しいのが、千早の「母」が何故「それ」をしたのかの説明が足り
ないかなぁ~、というのが唯一残念なところでしょうか。
小説は、私にとってコスパが一番高い楽しみですね。
だって、税別860円で、これだけ楽しめるのですから。
出勤は気怠くても、通勤電車の中と昼食時の読書は、平日で何よりの
楽しみな時間です。
★★★★☆