運転手足りない 見直し相次ぐ路線バス
沿線住民からは不安の声
運転手の人手不足などを背景に、路線を見直すバス会社が相次いでいる。
佐賀県唐津市に本社がある昭和自動車は、佐賀市北部を中心に26路線の
見直しを検討しており、沿線住民からは不安の声が漏れる。バス業界は
運転手不足だけでなく、高齢化や働き方改革といった重い課題を抱えて
おり、生活の足を脅かす事態は今後も各地で続きそうだ。
佐賀市三瀬村の山あいを走る昭和自動車の三瀬線は、同社が見直しを進め
ている路線の一つ。「バスがなくなるともう遠くには行けなくなる。タク
シーは高いので使えない」。同村の農業、中田春代さん(84)は不安をの
ぞかせる。自家用車はなく、隣の神埼市の姉の家までは三瀬線を使ってい
る。同社や関係自治体は代替交通手段も含め検討を進めるが見通しは立っ
ていない。
同社によると、佐賀市のJR佐賀駅と三瀬村を結ぶ三瀬線は「日中2、3人し
か乗らない」。赤字分は沿線自治体から補助を受けているが、その額は増
え続けている。
同社の路線見直しの背景には、運転手の高齢化と人手不足が横たわる。
運転手の平均年齢は、2009年4月の50歳と比べ今年2月は52・7歳と高齢化。
この間、運転手の人数は332人から303人に減った。同社の黒田正直乗合事
業部長は、大型2種免許のハードルが高いことなどから「新規の運転手が
増えない」と漏らす。
さらに、現在の路線数を維持したまま長時間労働の是正などに取り組む
「働き方改革」を進めると、運転手が現在の1・2~1・5倍必要になり、
黒田部長は「事業を継続するためには路線再編は避けて通れない」と苦し
い胸の内を明かす。
高知市を中心に路線バスを運行する「とさでん交通」(同市)も昨年4月、
運転手不足を理由に、市内を走るバスの土日祝日ダイヤを計49便減便した。
西日本鉄道(福岡市)も昨年3月、働き方改革で、天神と博多を結ぶ循環
バスの運行ルートを短縮。熊本市内を走る「熊本都市バス」も今年4月から
運行本数を約5%減らすなど影響は都市部にも出ている。
日本バス協会が17年10~11月に30両以上を保有するバス会社を調査した結
果、310社のうち85・8%が運転手不足と回答した。運転手の平均年齢は
51・3歳で50代以上がほぼ半数を占める。同協会は「このまま運転手が減り
続けると、路線を縮小するしかない。対応が難しいところまで来ている」
と危機感を募らせる。
運転手不足にあえぐバス業界。国土交通省によると、バス運転手の年間の
平均労働時間は全職業の平均より約2割長い一方で、年間賃金は約1割低い。
約65万人の組合員を擁する全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)
は「もう労使間では労働環境を解決できない状況」と話す。
◇働き方改革 低賃金に追い打ち
なり手不足の背景には、大型2種免許のハードルの高さを指摘する声がある。
道路交通法は、大型2種免許の受験資格を21歳以上で、普通免許保有3年以上
などと規定している。業界側は、高校新卒の運転手志望者を増やしたいと
年齢要件の引き下げなどを国に要望。警察庁は今年度、有識者会議で議論し、
教習の充実などの安全対策が講じられれば「受験資格を特例的に見直すこと
を認める方向性が適当」との提言をまとめた。
福岡大社会デザイン工学科の辰巳浩教授(交通計画)は「ヨーロッパでは、
公共交通は都市インフラの一つと考え、公共交通にも税金を使うべきだとの
認識だ。財源の問題はあるが、補助金という形で路線維持や運転手の待遇改
善を図るなど国も知恵を絞るべきだ」との見方を示す。
路線バスに乗ると必ず見られるのが、バス運転手さん募集広告。
大型免許があれば、第二種免許は会社で取らせるとのこと。
それでもなり手がないのは、やはり重労働と低賃金なのでしょうか。
重労働といっても拘束時間が長く、休日もサラリーマンのように
カレンンダー通りにはいかないことも、理由の一つにあるのでしょう。
田舎道を運転していると見かける路線バスですが、乗客なんてほと
んどいません。人を運ぶより空気を運んでいるような印象。
それでも補助金(税金)を投入してでも赤字路線を運行しなければ
ならないのか否かは意見の分かれるところ。
個人的にはやはり税金を投入してでも、採算が取れない赤字地区の
交通インフラは守るべきだと考えます。
水・電気・ガスが出来て、交通網はダメということはありません。