少し前のスレですが

競馬



650: おさかなくわえた名無しさん 05/02/25 09:47:23 id:VBcGkEaE
現在アメリカ留学中ですが,
少し前にあるアメリカ人の初老の男性と
話をする機会がありました.


「お前は日本人か?」
「そうです」


「そうか・・・日本人か.父は日本人と太平洋で戦った.」
「はぁ.」


「日本人の君に,聞いて欲しい話があるのだが...」


「子供の頃,自分の一番の楽しみは,
土曜日の朝にテレビでアニメを見ることだった.」


「その頃は,当然だがまだ白黒テレビで,
窓においたアンテナをうまく調整しないと電波が入らない,
そういうテレビしかなかった. 」


「その頃にどんな番組を見ていたのか,
今ではほとんど覚えていない,
が,ひとつだけ,
今も忘れられない素晴らしい番組がある. 」


「その番組が見れるのは,
本当に大気の状態がよいときに,アンテナを正確に
クリーブランドの放送局の方向にあわせた時に限られた.」


「あんなに素晴らしい物語は,
あれよりあとにも見たことがない.
ロボットたちが人間のように考え苦悩し
悪役のロボットたちにさえ,
とても悲しい物語があったのだ. 」


「あれは,単なるアニメではない.
もっと哲学に近い何かがある物語だった.」


「未来の世界を描いたものだった.
主人公はロボットの少年で,
自由に空を飛ぶことが出来るんだ.
そう,少し変わった髪形をしていたな...」


651: おさかなくわえた名無しさん 05/02/25 09:47:59 id:VBcGkEaE
老人がそういいながら手元の紙に書いた絵は,
浜田画伯よりは少し上手な鉄腕アトムだった.


「しかし私はあれが日本のアニメとは知らなかった.」


「日本は,野蛮で乱暴で,
戦争に負けてボロボロの国だ,と信じていたんだよ. 」


「こういっては気を悪くするかも知れんが,
あの時代の少し前までは
日本製品』というのは粗悪品の代名詞でな... 」

「もちろん,今では,アストロボーイが
日本のアニメであることは知っているよ. 」
「だが一つ,まだ気になっていることがある.」


ここで彼は少しだけ沈黙した.


「あの少年の名前は『アトム』というのだね?
そして妹は『ウラン』だ. 」


「なぜなのだろう.
やはりヒロシマナガサキに関係があるのかね?」


僕は
手塚治虫がどう考えていたかは知らないが,
おそらく科学が持つ光と影を
最もよく体現する名前として,原爆を連想させる
「アトム」や「ウラン」を選んだのだろう」
と答えた.


652: おさかなくわえた名無しさん 05/02/25 09:49:41 id:VBcGkEaE
「そうか...」


老人は長いこと沈黙し,また語りだした.


「戦争中,そして戦争後もしばらくは,
日本は文明を持たない野蛮な国だと教えられていた.」


「しかし,日本人は,アメリカが
この先何年たっても生み出せないような素晴らしい作品を
今から何十年も前に生み出すことの出来たような,
本当に洗練された文化を持った国だった. 」


「我々は,そんな国に原子爆弾を落としてしまった...
アメリカが文明国を名乗るに値しない野蛮な人種なことを,
自ら証明してしまった... 」


「しかし,日本は今もアメリカにとって
最大の友好国として付き合ってくれている.」


「日本人は,アメリカを許してくれたのか?」


僕には,ただ
「日本人は,あの戦争を,
悲しい記憶としていつまでも忘れることはないでしょう.
が,アメリカを憎悪し永遠に許さないことが
建設的であるとも思いません.」
としか言えなかった.


もっと色々なことが言いたかったのだが,
どうにも言葉にならず,
さらにそれを英語で伝えるのは不可能だった.


老人はそれを聞いて,
「本当に申し訳なかった.父たちを許してくれ.」
と言った.
また
「一度,日本人にこの話を聞いて欲しかったんだ」とも.


長くなりましたが,結論 は「治虫GJ!」ということで.