Financial Times 中国は日本への挑発をやめよ(社説)

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東シナ海無人の島々を巡る日中間の領土紛争がさらに危険な状況に陥っている。
中国政府は先週末、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む東シナ海上空に「防空識別圏」を設定。
日本政府への圧力を徐々に強める戦略を一歩進めた。



中国政府によると、防空識別圏に入る航空機は事前に飛行計画を伝える必要があり、通告が無い場合には
「防御的な緊急措置」を講じるという。尖閣諸島上空は日本の防空識別圏にも属し、自衛隊機が定期的に
巡回・監視していることを考えれば、中国政府の今回の動きにより偶発的または故意による衝突の可能性
が高まるのは明らかだ。



日本が実効支配する尖閣諸島を巡る紛争をたどると、中国が「戦争で日本に盗まれた」と主張する19世紀末
に遡る。日本政府は無人島であることを確認した上で1895年に合法的に領土に組み込んだと反論するが、
中国側も古代から自国の固有領土で、第2次世界大戦後に返還されるべきだったと譲らない。
中国政府は「領土問題は存在する」と日本側に認めさせたがっているが、日本政府はこれをはねつけている。



■威嚇で打破しようとする中国



主張の是非はともかく、中国政府の行動は愚かだ。尖閣諸島は米国が1945〜72年に沖縄県の一部として支配
していた時期を除いても、100年以上にわたり日本の実効支配下にある。これに対し、中国は威嚇行為で現状
を打破しようとしている。尖閣諸島は潜水艦の重要航路に位置するため、支配下に置けば潜水艦の行動範囲
を広げられるという中国海軍の野心を実現できるだけでなく、歴史的報復も果たせる。
ただし、尖閣諸島日米安全保障条約で米国の防衛義務の対象となるため、事態がエスカレートすれば危険
は倍増する。

 


中国政府が国際法に照らしても自らの主張は正しいと確信できるのなら、国際仲裁機関への提訴を目指すべきだ。
日本政府は提訴に同意しないだろうが、同じように自らの正当性を主張する立場から、中国政府が判決に従う
という保証があれば国際仲裁に応じるかもしれない。それはさておき、日中両国は問題の解決を将来の世代の
知恵に任せて棚上げし、以前の状態に戻すよう努めなくてはならない。その上で、漁業権や石油探査権など天然
資源の共同管理を目指すべきだ。

 


一方で、中国政府の狙いは別にあるのではないかとの疑念も生じる。尖閣諸島を日米同盟に亀裂を生じさせる
手段と捉えているというのだ。だとすれば、それは無責任なゲームでしかない。





10月3日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)で文書を交わすケリー米国務長官(中央左)と
岸田文雄外相。見守るヘーゲル国防長官(左)と小野寺五典防衛相=代表撮影


→ http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV26001_W3A121C1000000/