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[FT]四川地震で支援活動を規制 中国が恐れたこと



2008年に地震が中国・四川省を襲った時、ボランティアと急きょ結成された市民団体が現地に押し寄せ、
救援活動で大きな役割を果たした。だが、2カ月ほど経つと、多くの人は被災地から去るよう命じられた。
中国政府は、独立系の集団が支援活動を組織し、その結果、伝統的に政府の領分だった縄張りを侵害する
ことにうんざりしたからだ。




ソーシャルメディアで素早い組織化
今回、4月20日地震四川省を襲うと、政府は当時よりずっと素早くボランティアや慈善団体、義援金
流入の統制に動いた。震災の翌日、ボランティアや市民団体は、中国国務院(内閣に相当)の許可証なしで
被災地に入ることを禁じられた。

 

政府にとって、こうしたボランティア団体は支援を意味するだけでなく、微妙な政治的課題でもある。
中国では、統制を試みる政府の努力にもかかわらず、市民社会と市民の関与が勢いを増しているからだ。

 

20日の四川地震は、ソーシャルメディアのおかげで、こうした市民団体がいかに容易に活動を組織化し、
いかに素早く大きな支援を得られるかを見せつけた。ボランティアは学生から医療の専門家、キリスト教団体
に至るまで様々だ。20日地震の直後、中国各地の人々は3億人以上の会員を擁するメッセージングサービス
微信」にアクセスし、家族と連絡を取ったり、何か支援できないか確認したりした。

 

微信上で結成された支援団体の1つが「420聯合救援行動」。四川省内の20余りの非政府組織(NGO)が
緩やかな連携を図った団体で、団体名は地震発生日の4月20日にちなんで名付けられた。

 

このグループの調整役を務めるフー・ヤン氏は「地震が起きた時、当初は電話やテキストメッセージが使えな
かったが、微信は動いていた」と話す。同グループは20日の午前10時、地震発生からわずか90分後に物資を求める
メッセージを投稿し、その日のうちにトラックいっぱいの救援物資の第1弾を現地に届けた。



■許可制度を擁護する団体も



だが、国務院の発表以来、市民団体は被災地に入る許可を得るのに苦労している。「我々のところでも許可証は
限られている」とフー氏は言う。「実際、許可証を1つも得られず、口論している人を見かけましたよ」

 

封鎖の表向きの理由は、地震が襲った山間部の狭い道路での交通渋滞だ。だが、渋滞の多くは、狭い道を走る
大型の政府車両と交通の調整不足によって引き起こされていた。



一部には許可制度を擁護する向きもある。政府系の大手社会福祉機関の開発担当者、ジェン・イーリン氏は、
被災地には700以上の団体が入っているが、必要な知識と訓練経験を持ったところは20%しかないと指摘。
さらに、「多くのボランティアは全く無目的でやって来た」という。



■政府関係団体への寄付を避ける動きも



だが、多くの人が見るところ、もっと重要な封鎖の理由は、政府が救済者という地位の独占を維持したいと考えて
いることだ。
中国政府は、2008年の地震後の市民の援助のうねりを避けたいと思っている。当局が気付かされたように、こうした
力はひとたび解き放たれると、再び封じ込めるのが難しい。一部の慈善団体は、地方の役人たちが隠しておきたかった
事実を暴き、地方政府の悩みの種になっている。

 

慈善メディア「慈善家」の創業者であるワン・リウェイ氏は、中国政府は2008年のボランティア「ブーム」の再来を
防ぐのに躍起だと話す。その理由の1つは、政府としては、その他の団体の活動の横で自分たちの救援活動がお粗末
に見えるのを嫌がっているからだという。

 

かなり斜に構えた見方に思えるかもしれないが、中国の一般市民も同じように不信感を抱いている。
市民はもっぱら民間の基金や慈善団体にお金を寄付しており、汚職と透明性の欠如を懸念して、中国赤十字など政府
と関係のある団体を避けているのだ。

 

自然災害は多くの場合、共産党プロパガンダの好機になる。だが、市民活動の高まりは、党の権力支配に対する
根本的な脅威だ。というのも市民の活動は、全能の党が導いてくれなくても、個人がどれだけのことを成し遂げられる
かをはっきり示すからだ。


By Leslie Hook


→ http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM26067_W3A420C1000000/?dg=1