『霧笛荘夜話』(浅田次郎著・角川文庫)

競馬


「第6話 マドロスの部屋」

終戦で死に損なった学徒動員・特攻隊員(中隊長)の、その後の物語。 
特攻隊員の出撃前に書いた一通の遺書(恋文)が、悲劇を演出してしまう。
『僕が幻想の恋愛によって理不尽な宿命に理を与え、死と調和しようとしたのと同様に
澄子もまた恋愛に身を委ねて、そうすることが義であると思いこんだにちがいなかった』



「第7話 ぬくもりの部屋」
霧笛荘の管理人である老婆・太太(たいたい)と霧笛荘の物語。
第6話の主人公・元特攻隊員が、大金を提示して立ち退きを迫る、ディベロッパーに対する台詞。


『あのねぇあなた。資本主義がどれほど成熟しても金が全能ではないのですよ。
お金持ちは得てしてそう信ずるが、それは誤りです。
人間とことん貧乏をいたしますとね、ふと真理に気付くんですね。
世の中は千金万金を積まれたって売ってはならないものが、たくさんあるのです。
大学でも銀行でも教えてはくれないでしょうけど』



船舶は霧を嫌がります。 そりゃそうでしょう、視界不良で衝突の可能性が増すからですね。
そこで汽笛を鳴らして、その存在をアピールするワケですよね。
人間だって、霧に包まれて目標を失いかければ、警笛を鳴らすんでしょうね。
そんな7つの物語です。


霧笛荘夜話

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