携帯電話基盤整備は公共事業で

競馬

菅政権の「携帯電話料金値下げ」を
手放しで喜んではいけないワケ


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(前略)


さらに、総務省は、もう一つ布石を打っている。

 
格安スマホ会社に対するデータ通信の接続料について、今年度から「将来
原価方式」という新方式に切り替えたのだ。これは、大手携帯電話会社側
のコストが一定ならば、MVNOが扱う通信量が増えれば増えるほど接続料
が下がる仕組みだ。

 
これにより、今後3年間で最大50%、つまり半分にデータ通信の接続料が
下がるとの予測もある。仮に、接続料の低下分を全額サービス料金の値下
げに注ぎ込むMVNOが現れれば、サービス料金が5割下がる可能性がある
わけだ。


 
データ通信の接続料の低下が定着すれば、MVNOの泣き所だった、大容
量の格安データ通信プランの登場も現実味を帯びる。2000年頃から高止
まりが目立っていた携帯電話料金はようやく大きく下がる時期を迎えよ
うとしている。

 
気掛かりなのは、総務省が調子づき、さらなる値下げ促進策の準備に余
念がないことだ。固定ブロードバンドと携帯電話のセット販売や、スマ
ートフォンでは実現できていないネットだけでの事業者の変更を可能に
する方策などを視野に入れており、携帯電話会社の収益力を弱体化させ
るリスクが出ているのである。 

 
菅総理が武田総務大臣首相官邸に呼び、携帯電話料金の引き下げを指
示したとのニュースが市場に伝わった9月18日午後、東京証券取引所
は一時、NTTドコモ株がほぼ1年ぶりの安値をつけた。同様に後場au
運営するKDDIも安値をつけ、ソフトバンクモバイルも下げた。

 
市場は、政府主導の携帯電話料金引き下げが携帯大手3社の経営にダメ
ージを与えることを警戒したのである。


比べるべき相手を間違えている
 

筆者が特に懸念するのが、菅総理が携帯3社の売上高営業利益率を東電や
東ガスと比べて「過度な利益で、不健全だ」と主張し続けていることだ。
いったい、なぜ、福島第一原発事故を起こして破綻に瀕し、国営化され、
事故の後始末に喘ぐ東電と比べるのか。比べるなら、世界のデジタル革
命の中で競い合う立場にある米国の携帯電話会社、中でも経営の健全な
大手と比較すべきである。

 
ちなみに、日本勢3社はここ2、3年の値下げもあって、直近2019年度の
売上高営業利益率が18.9%(3社平均)に低下、米国の2強であるAT&Tとベ
ライゾン・コミュニケーションの19.2%(2社平均)を下回った。

 
それ以上にショッキングなのは、日本勢の営業利益が3社合計で2兆7900
万円強と、米携帯2位のベライゾン単独の2兆9400万円弱(1ドル105円で
換算)にさえ届かないことだ。

 
デジタル革命の世界では、携帯大手だけでなく、アプリやSNS大手のGA
FAやBATと呼ばれる巨大IT企業もひしめきあい、研究開発と技術革新の競
争にしのぎを削っている。

 
モノを言うのは豊富な資金力、つまり収益力であるにもかかわらず、日
本の携帯3社は束になってかかったとしても米国2位の携帯電話会社ベラ
イゾン1社にすら太刀打ちできないのである。

 
これでは、日本は、デジタル革命のインフラであるモバイル通信サービ
スで旧式ネットワークしか持てず、産業競争力が劣化しかねない。新総
理に失礼だとお叱りを受けるかもしれないが、言うべきことは言うべき
だろう。比べるべき相手を間違えている。

 
携帯電話事業は、国民の財産であるばかりか、希少な資源である周波数
の割り当てを受けないと事業に参入できないため、他の産業に比べて参
入障壁が格段に高いのが特色だ。それゆえ、政府は、常に市場の競争環
境の整備を怠ってはならない。これは自明のことである。


(中略)


最後に思い出してほしいのは、去年から米国や韓国、中国では日本に先
駆けて新世代の通信規格5Gを用いた商用サービスが本格的に始まったの
に対して、日本では依然としてサービス地域が限定的で大きく遅れをと
っているという現実だ。かつて世界をリードした日本の姿は、影も形も
ない。

 
こうした事態に危機感を抱いたからこそ、安倍前政権も今年度から、こ
の次の世代の通信規格6Gの開発競争へ向けて異例の補助金付与や税制優
遇を打ち出した経緯がある。

 
ところが、そうした現実への危機感を忘れ去り、過度な値下げ圧力を携
帯電話会社に加えることは政策の方向性がちぐはぐなだけでなく、携帯
電話会社とユーザーである一般産業の両方の国際競争力の回復と強化を
難しくする行為だ。ひいては、利用者である我々が享受できるサービス
の高度化も遅れることにもなりかねない。


news.yahoo.co.jp


要するに、携帯電話会社の首を絞めると、5Gなどのサービスのための
インフラ整備が遅れるぞ、ということですね。
また、日本3社の大手携帯電話会社の営業利益と米国大手携帯電話会社
の営業利益を単純に比較するのはどうなのでしょうか。米国はザックリ
言って日本の人口の3倍の国ですよ。
ガラパゴス化した日本のスマホ市場を、国際的トップクラスにするため
には税金の投入が必要と思われます。道路・河川・海岸整備などの公共
事業の一つとして、携帯電話の基盤整備を含めるべきと考えます。
治山工事も大切ですが、携帯電話の基盤整備(ハードの整備)に国が率
先して牽引役を果たすべきではないでしょうか。
今は子供から爺ちゃん婆ちゃんまで使っている携帯端末。この情報通信
分野を公共事業として行うことに対して、反対者はかなり少数でしょう。
その上で、携帯電話会社に対して、引き下げを求めるべきではないでし
ょうか。利益を剥ぎ取って、さぁ5Gを早く進めろというのは、携帯電
話会社にとっては何とも矛盾した感慨を持つでしょうね。