サムスン 実は外資系企業なんですけど

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サムスン電子と心中か? 韓国経済の暗雲
大前 研一氏


サムスン電子がコケたら皆コケた」



韓国サムスン電子が2013年10〜12月期で2年ぶりに減益になった。
同期の営業利益は8兆3000億ウォン(約8100億円)で、前期比(7〜9月期)で約18%のマイナスだ。



右肩上がりに最高益を更新してきたサムスン電子の進撃に急ブレーキがかかったように見えるが、
前年同月比で見れば6%程度のマイナス。とはいえ、13年通期の連結営業利益は36兆7850億ウォン
(約3兆5000億円)、前年比約27%増で最高益を更新中だから、勢いが落ちてきたという評価は当
たらない。



しかし、朝鮮日報をはじめとした韓国の有力紙は、韓国経済の先行き懸念と絡めて、「サムスン減益」
を大々的に報じた。



なぜ韓国メディアがそれほど大騒ぎするのかといえば、サムスン電子の業績は、単に一企業の調子の
良しあしでは済まされる話ではないからだ。
サムスン電子の売上高は、13年で230兆ウォン(約22兆円)以上。韓国経済(GDP)の約2割を占め、
韓国の輸出総額の約24%を占めている。



昨年1〜9月期の韓国経済は、前年同期比で営業利益こそマイナスだったが、輸出と売上高はプラス
だった。しかし、そこからサムスン電子の業績を差し引くと輸出も売上高もマイナスに転じ、営業
利益のマイナス幅は3倍以上に拡大する。



つまり韓国経済はサムスン電子のおかげできれいに“お化粧”できているわけで、サムスン電子
傾けば、その化粧が剥がれ落ちてしまうのだ。



たとえばホンダやソニーが業績を落としても、日本経済が揺らぐということはない。
日本経済を牽引する大企業はほかにいくらでもある。



韓国にも現代自動車、家電のLG、鉄鋼メーカーのポスコなどの大手企業があるにはある。
しかし、サムスン電子の数字があまりに突出していて、代わりに韓国経済を支えうる企業が見当たらない。
サムスン電子がコケたら皆コケた」が韓国経済の実情なのだ。



スマホコモディティー化していく


サムスン減益の主な原因は、スマートフォンスマホ)の減速と見られる。
スマホ市場が成熟化してきた中で、米アップル社の復調と低価格スマホを主力とする中国メーカーの追撃
が響いた格好だ。

サムスンのセグメント別業績(単位: 兆ウォン)ただし、サムスン電子にも構造的要因がある。
サムスンのセグメント別業績」である。これを見ると同社の売り上げが、スマホを中心としたIT・
モバイル部門に偏っていることがわかる。デバイススマホにも使われている半導体のことで、
それら含めたスマホ関連の売り上げが全体の8割を超えている。逆に家電部門は低迷、テレビ事業に
至っては「赤字」だ。



こうした過度のスマホ依存体質が、今やサムスン電子の最大のウイークポイントになっている。
以前から指摘しているように、デジタル化の宿命として「スマホコモディティー化していく」
のは避けられない。近い将来には1万円台、さらに5000円くらいまで低価格化が進む可能性がある。



今後、スマホのマーケットの中心は新興国や途上国に移っていく。
そこでは基本性能だけ備えて追加機能はアプリで対応するという形の“低価格スマホ”が主流に
なっていくだろう。そうなったときに、サムスン電子のコスト体質で「5000円スマホ」に対応
できるのか、私には大いに疑問である。



それではスマホに代わって収益源になりうる事業が育っているかといえば、それも外からは
見えてこない。
そもそも、これまでにサムスン電子がオリジナルで作り出したユニークな商品が何か一つでも
あるかといえば、何もない。



日米の半導体摩擦が激化した1990年代初頭、日本は半導体の20%を輸入しなければならなくなった。
しかし当時、アメリカで作っていた半導体はもっぱら軍事用だったし、インテルやテキサス・イン
スツルメンツなどはすでに日本で生産していたので輸入扱いにならない。



日本企業は窮余の一策として韓国企業にノウハウを伝授し、韓国製の半導体を輸入することにした。
これをきっかけにしてサムスン電子半導体事業で急成長を遂げ、後に日本の半導体産業は韓国に
寝首を掻かれることになる。



半導体事業で躍進したサムスン電子は余勢を駆って、(ソニーと合弁の)液晶パネルや薄型テレビ
などに大規模投資を行って家電分野の世界シェアを広げていく。
一方では携帯電話事業ではGoogleのアンドロイドというフリーウエアに出合ってアンドロイドOSを
搭載したスマホを開発、スマホブームに乗って一気にブレークした。



リバースエンジニアリングで先行商品を徹底的に分解、分析し、日本企業などから技術とエンジニア
を人馬一体で引き抜いてくる――。そうやって先行商品に追い付き、巨額な広告宣伝費を投じて追い
抜いていくのがサムスン電子のビジネスモデルなのだ。



サラリーマン経営者では太刀打ちできない


SPEEDとSCALEで他を圧倒するモデルだから先行商品があって、開発の方向性がわかっているときは強い。
日本の企業がモタモタと会議を繰り返して意思決定に時間をかけている間に、さっさと開発にGOが出て、
マーケティングと広告戦略も決めて、市場を支配していく。
そのトップダウンのスピードとスケールたるや、日本のサラリーマン経営者企業では太刀打ちできない。

腕時計型端末「ギャラクシーギア」を発表するサムスン電子のIT&モバイル部門担当のCEO。
そうした意思決定を可能にしたのは、李健熙というカリスマ経営者の存在である。
サムスングループ創業者の三男で2代目会長である李健熙氏は、経営の天才であり、強烈なまでの権力
志向と独裁的な意思決定で知られている。
ハッキリ言えば、彼の独裁型経営が先鋭化して、いままで当たりに当たってきたのだ。



しかし世界最大の家電・ITメーカーになった今日、追従すべき先行者を見つけるのは困難だし、今年
72歳になった李健熙会長の後継問題も、今後は浮上してくる。



李健熙会長のような独裁型のカリスマの後で、同じような経営が引き継がれるケースは稀だ。
かといって社内体制を民主化した場合には、日本の家電メーカーが陥っているように意思決定が遅く
なるし、インパクトにも欠けてくる。



カリスマ経営者の才覚に頼ってきたサムスン電子と、そのサムスン電子に頼り切ってきた韓国経済は、
次なる成長エンジンを見いだすことができるのだろうか。



「中進国のジレンマ」に陥った韓国


私に言わせれば、サムスン電子の問題は韓国が抱える課題そのものだ。
韓国は日本の半分近い人口の国でありながら、金大中氏がノーベル平和賞を取った以外、ノーベル賞
受賞者は1人もいない。なぜノーベル賞が取れないかといえば、独創的な研究よりもパクってでも成果
を出すことのほうが評価される国だからである。



韓国では伝統的にエンジニアが軽視されてきた。そういう社会では、やはりイノベーションは生まれ
にくい。サムスン電子も今は研究開発に莫大な資金を投じているが、なかなか成果が上がってこないのは、
そのあたりの理由もあるのだろう。



また、より高機能の製品部品や素材を作るような地道な研究開発も韓国は行わない。
超小型化や超軽量化を可能にする部品や素材、工作機械などが突然、日本から出てくると、韓国メーカー
はそれを買わなければならない。メーカーに寄り添って息の長い改良研究をするような下請け企業の裾野
が韓国にはないからだ。サムソン電子と下請け企業は単に発注元と出入り業者の関係でしかない。
こうした産業の“底”の浅さは、韓国が「中進国のジレンマ」に陥っている大きな理由だ。



韓国の国民1人あたりGDPは約2万2600ドル。最近では一般的に国民1人あたりGDPが1万ドルを超えると途上国
から新興国になり、2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国の仲間入り、とされる。
しかし2万ドル経済を超えて3万ドル経済に向かおうとする中進国は、しばしば労働コストや為替が高くなって
競争力を失い、3万ドルに近づくと落ちる、という動きを繰り返す。これがメキシコなどが陥ってきた
「中進国のジレンマ」だ。



労働コストや為替の上昇を乗り越えて3万ドル経済に突入するために何が必要か。
一つは「イノベーション」である。その代表格が日本で、日本企業はイノベーションによって商品力をアップ
し、5年間で中進国を卒業し先進国の仲間入りをした(スウェーデンは4年で、これが“ギネス”記録となっている)。
もう一つは「ブランド」で、イタリアやフランス、スイスなどはブランド力でのし上がった国だ。



韓国の場合、イノベーション、ブランド力ともにまだ発信力は弱い。
サムスン電子がそれを克服する突破口を開くのか、はたまた別の企業がその役割を担うのか、今はまだ見えてこない。



サムスン電子の成長神話に陰りが見えたときに、韓国経済自体の抱える“ジレンマ”に思いを馳せなくてはならない
ところがG7とG20との違い、ということになる。



→ http://president.jp/articles/-/12108


大前研一「これからは韓流。日本は韓国を見習え」(2008年日経)
日和ったとは思いませんが、まぁ現実を直視している本文で許して
あげましょう(笑)。
実はサムスンは外国人株式保有比率が50%を超えています。
彼らがサムスン株を投げ出した時が、サムスンの、韓国の終焉
なのでしょう。