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「薬の代わりに」覚醒剤まん延 北朝鮮の実態


北朝鮮人による言論メディアを目指し、北朝鮮住民らをジャーナリストとして養成、彼らの潜入取材
を元に雑誌『リムジンガン』を発行してきた日本人ジャーナリストの石丸次郎氏。
2月末発行の最新号(6号)で金正日総書記急死後の北朝鮮からの生々しい証言を多数紹介した。
そこには体制への怨嗟(えんさ)と取り締まりへの恐怖、金一族支配への失望が滲む。
ただ、石丸氏は「当面、反体制勢力が構成される可能性はゼロだ」と言い切った。
石丸氏に北朝鮮内部の最新情勢を聞いた。



■恐怖が支配する北朝鮮内部


金正日死後、北朝鮮内部の情報提供者と約70回、電話でやりとりしたという石丸氏は、北朝鮮の現状をこう述べた。
「政権は金正恩体制の安定と安全を最優先しているため、人、モノの移動がこれまでになく厳しい監視統制下にあり、
住民の間には逆らえば命取りとの恐怖が広がっていて、人々が息を潜めている感じだ。
緊張のピークはこれから(金日成生誕100周年の)4月下旬まで続くだろう」

 
『リムジンガン』に紹介されている北朝鮮民衆の生の声はこんな風だ。
『何も変わりませんよ。とっくに諦めていますよ』
『暮らしは悪くなる一方。朝鮮の人はただ、生きているだけなのではないか…』
『皆、強盛大国なんか犬でも食らえといっている』
『(世襲に)全く期待しないし希望もない。悪い根からは悪いものしか生まれない…』 


中朝国境の北朝鮮側に石丸氏の情報提供者の国境警備隊の兵士がいた。
これまでは「潜伏哨所」という穴に隠れて脱北しようとするものの監視に当たっていたのだが、金正日の死後は国境沿線を
ずっと巡回するよう命じられたという。
電話で石丸氏に「脱北者をひとりも出すなと命令され、忙しくて死にそうだ」と話した。
国境の警戒態勢は1月下旬にいったん緩み、2月16日の金正日生誕日まで厳しくなり、いまは少し緩んでいるという。

 
90年代前半から約80回の中朝国境取材を通じ北朝鮮をみてきた石丸氏は、今後をこう分析している。
「いま、反体制勢力が生まれる余地はほとんどゼロだと思う。監視は庶民より幹部に対してずっと厳しい。党や軍の幹部は
行動を10分刻みで報告させられているという。(粛清を恐れ)戦々恐々としているだろう」

 
その一方で、金正恩体制の弱点も指摘する。
「内部から連絡のあった清津、会寧、茂山などでは2月から部分的に食糧配給が復活している。正恩時代になって、少しは
よくなったと、体制安定のために民心掌握を図るのが目的だろう。だが、政権は昨年以来、大変な政治的浪費をしている。
莫大(ばくだい)なカネと労力をつぎ込んでいる平壌の化粧直し、4月の金日成生誕百年の行事、金正日の遺体のミイラ化、
銅像作り…。何の生産性もない。金正日−正恩親子の偶像化と権威付けだけが目的だ。このままでは経済はいずれ行き詰まる。
その時、経済難をどう打開するのか、政策をめぐって金正恩を取りまく特権層の間で利権争いや路線闘争が闘争が起きる可能性がある」

 
■飢えと寒さと薬物の蔓延
 

昨年来、北朝鮮ではこれまで以上に電力事情が悪化、金正日総書記の死亡もテレビで知ることができず、ジャンマダン(闇市場
などで口こみで広まった。
日朝関係者によると、電力逼迫(ひっぱく)の兆候は昨夏からはじまり、今冬には平壌市内でも通電が1日1時間ということが
珍しくなかった。石丸氏によると、毎年、冬季は全体の約55%を占める水力発電所が供血のため稼働率を落とすが、さらに経済逼迫
(ひっぱく)により北朝鮮が大量の石炭を中国に輸出したため、火力発電所が動かせなくなって電力事情が深刻化したとみられている。

 
食糧事情、電力事情の悪化にくわえて、薬害も広がっている。
『リムジンガン』は、中朝国境に脱出した北朝鮮住民などの取材から、北朝鮮全土に蔓延している覚醒剤中毒の実態をリポートしている。
それによると覚醒剤は 「オルム」(氷)、「ピンドゥ」(氷毒)と呼ばれ、『会寧市内では半数近くの人たちが麻薬をやった経験が
あるのではないか。麻薬で家庭が壊れたり家を売り払ってコチェビ(浮浪児)になりはてたりした人もいる』という証言を紹介している。

 
もともと80年代、金正日の主導で外貨稼ぎの手段として始まったアヘン生産だが、国際社会からの批判を浴び、90年代後半から
覚醒剤に変わった。さらに海外の取り締まりが強化されると今度は国内に広まった。利ざやの大きい商売としても蔓延してしまった。

 
2009年、核実験により国連安保理決議で密輸取り締まりが強化されたことと、国境から流入する大量の覚醒剤を中国が問題視した
ことが契機となって、昨年からは北朝鮮当局も摘発をはじめている。

 
しかし、北朝鮮の薬物汚染は根深く社会にしみこんでしまったようだ。北朝鮮から日本に脱北した元在日帰国者はこう証言している。

 
「とにかく麻薬の浸透はすごい。薬もろくにない国だから皆、薬の代わりにしていた。5年前、私は息子を北朝鮮に残して脱北したが、
その後息子は中毒になってしまった。あの国は麻薬で滅んでしまう」


→ http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/548982/


http://www.youtube.com/watch?v=bYMLm2fBD0w:movie,w500