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中国の大気汚染対策―焼け石に水



大気汚染問題の解決に取り組む中国政府は広範な国営企業や地方政府などの強い抵抗に遭っている。
近年では最悪となった大気汚染を受けて、発足したばかりの同国の新指導部の力量が問われている。

 
長期にわたる猛烈なペースでの経済成長の結果としての同国の深刻な環境問題は今や、力強い経済発展の障害
になる可能性があるとみられており、懸念の対象は大気や水質の汚染から化石燃料の消費増大にまで広がっている。
世界第2位の中国経済の活力を維持するのに必要な改革に関する論議の一環として、同国の環境悪化は今週スイス・
ダボスで始まる国際経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でのトピックの一つになるだろう。

 

石炭火力発電所―伝統的な大気汚染の主因―からの汚染物質を削減しようとする中国の取り組みが一定の成功を
収めていることを示す証拠は増えている。しかし、その一部は、石炭を燃料にする鉄鋼生産など急速に増大する
工業生産や、大きく増加している乗用車やトラックの数に比して遅れている燃費基準の改善によって損なわれている。
加えて、アナリストは、一部の汚染物質排出者をターゲットにした排出目標は広範な大気汚染問題を阻止するのに
十分ではない、と指摘する。

 

南京大学の大気汚染専門家ツァオ・ユー氏は「発電所からの排出削減の可能性は小さい」と指摘した。
同氏は、政府が今、製造業などの汚染源に注意を向けなければ、「全体の排出が増え続ける」としている。



ますます汚染に厳しい目を向けるようになった国民を、経済成長を損なわない形でなだめなければならないことを
承知している新指導部にとって、汚染源を見つけてこれを抑え込むことはどうしても必要だ。
この問題は1月に入って北京での「PM2.5」(人体に有害な直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質)が、
米国が健康にとって標準と見なす水準の70倍以上になったことで注目された。

 

国営新華社通信によると、北京の王安順市長代行は、老朽化した18万台の車を廃車にし、汚染物質を出す一部の
北京の住宅の石炭ボイラーの使用を禁ずるなどして、今年中に主要汚染物質を2%減らすことを約束した。

 

長期的には、費用がかかる工業用設備と製油所のアップグレードが必要になるが、コストを消費者に転嫁できない
国営企業と、収入を工業生産に依存している地方政府はこれに反対している。

 

中国の2大製油業者―中国石油化工(シノペック)とペトロチャイナ―はこれまでに環境面の改善に努力してきたと
主張している。シノペックは製油所の設備改善のために既に数十億ドルを投じたとし、ペトロチャイナは、設備は
国家の定める品質基準に合致していると指摘した。いくつかの鉄鋼メーカーにもコメントを求めたが、回答は得ら
れていない。

 

習近平国家主席を頂点とする中国の新指導部の経済改革がどのようなものであれ、規模の大小を問わず、国営企業
への対処は一つの課題になる。国営企業は資本と資源をめぐって民間部門と競争しているが、一方でこれらの企業
は政治的に結び付いたリーダーや、しばしば中央政府の政策目標の道具としての機能を持った大きな雇用主でもあり、
強い政治力を有している。

 

ここ数年、発電所と乗用車の汚染物質排出に目が向けられているが、同国の汚染問題は複雑で経済全体にまたがるものだ。
南京大学のツァオ氏らの研究チームは、2005〜10年の政府の排出抑制策の効果を調べたところ、石炭火力発電所からの
PM2.5排出量は浄化技術の定着で約21%減少したとの推定に至った。一方、鉄鋼生産における同排出量は、生産の増加
に伴って、10年には約39%増の220万トンとなった。


 
中国は特に、石炭の燃焼によって生じる二酸化硫黄や窒素酸化物など1次汚染物質が大気中で反応してできる2次汚染物質
を減らすことに力を入れている。1次汚染物質の削減では若干の成功を収めたが、アナリストは、人体に有害なPMなど
2次汚染物質の削減はまだ始まったばかりだとしている。

 

この研究に参加したハーバード大学チャイナ・プロジェクトのエグゼクティブディレクター、クリス・ニールセン氏は
「政府は、大きいけれども単純な問題の一部では成功しているが、より複雑な2次汚染物質問題では緒に就いたばかりだ」
と語った。チャイナ・プロジェクトは大気環境に焦点を当てている。

 

中国ではここ数年に鉄鋼生産が着実に増えており、12年は経済成長押し上げのために政府が道路、鉄道などのインフラに
多額の投資をしたことから、前年比3.1%増加した。鉄鋼業界は電力部門とは異なって細分化され管理が難しく、地方政府
は小規模で汚染物質を排出する企業に依存している。大きな鉄鋼会社は価格下落を受けて12年1〜9月に生産を2%減らしたが、
小規模企業の生産は逆に20%近くも急増した。

 

政府は鉄鋼部門からの排出を減らすためのいくつか措置を取ろうとしているようだ。産業・情報技術省(MIIT)は12年10月
硫黄酸化物の排出限度を引き下げた。

 

中国は新車販売で世界最大の市場になった。こうした背景もあり、環境規制当局にとって政治的力を持つ製油業界から譲歩
を勝ち取るのは難しい課題の一つだ。燃料価格が厳しく規制されており、高コストを消費者に転嫁できない中国の製油業者
はクリーンな軽油を生産するのに消極的だ。一方で、同国の自動車のほぼ4分の1はトラックだが、自動車全体が排出するPM
の80%近くがトラックによるものだという。

 

米中間のエネルギー問題に注目する非営利団体のエネルギー基金のゴン・フイミン氏は中国の財務部と製油業者はクリーンな
軽油を生産できるように施設を改良するために必要なコストへの補助金交渉が暗礁に乗り上げていると語った。

 

車が排出するPMの全体に占める比率は小さいとしても、過密な都市部では人体が浴びるPM2.5の最大の排出源であることは
ほぼ間違いないと「クリーンな輸送に関する国際委員会(International Council on Clean Transportation)」のバンス・
ワグナー氏は話す。

 

中国環境科学研究院のユエ・シン氏によると、軽油をクリーンにすることで排気ガスを15%減らせると主張する。
車両排気ガス制御センターのタン・ダガン氏によると、実務者が近々、軽油の環境基準の引き上げを発表するとみられるが、
補助金問題が解決するまで、製油業者はその基準が実施させることはないとみている。その上、過去に基準の適用が徹底
されていなかったことからしても効果は疑問だという。



→ http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324439704578258700847958638.html


http://www.youtube.com/watch?v=UXZqTcMuUG0:movie,w500


経済的躍進にばかり目を向けて環境に配慮を欠いたのは
シナだけではなく、日本もそうでしたね。
水俣汚染、イタイイタイ病光化学スモッグ四日市喘息
などなど、今では考えられないほどの環境汚染とそれが
要因となる疾病が蔓延していました。
ただ、環境汚染の原因となった企業への訴訟・賠償などを契機に、
これではいけないと、官民揃って環境対策に取り組みました。
経済成長を横目で見ながらね。
ただシナの場合は、経済的躍進を緩めても環境対策を取る
ようなことはしないでしょう。
主だった企業には中共・政府幹部がついていますから、
自らの利益を率先して犠牲にすることはないでしょう。
また人民解放軍が経営する企業(約2万社といわれています)
に至っては、環境問題?鼻にも引っ掛けないでしょう。



コメントは再掲

『中国の有害濃霧、日本面積の3倍に 病院取材を制限』

→ http://d.hatena.ne.jp/bakenshikabuya/20130130/p6