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[永遠を旅する者 ロストオデッセイ~千年の夢~]
重松清



 『その日のまえに』『カシオペアの丘で』などの著作を通じて、生きることの意味を問い続けてきた著者が、初めて「いつか、どこか」の世界を舞台に書き下ろした壮大な叙事詩です。主人公は千年の長きに渡って生き抜いてきた不死身の戦士、カイム。戦乱の世を憤り、ときに嘆きつつ、カイムは短い命を精一杯生き抜く人々に、慈しみの目を注ぐのです。この作品には、重松清という作家が書き続けてきた生への素晴らしい賛歌が唱われています。
 『ファイナルファンタジー』の生みの親・坂口博信氏がゲーム『ロストオデッセイ』のために、小説家・重松清に「主人公の心に眠る千年の記憶」の物語作成を依頼して完成した作品。因みにキャラクターデザインを担当した井上雄彦氏(『スラムダンク』著者)が本書のカバー画も描き下ろしています。



 文庫本に挟んでいるレシートを見ると、購入したのは2010年11月11日。恐らく読み始めたのもその頃ですね。とてもとても印象深い本であり、程なく内容を忘れかけた今頃、2度目の再読でした。
 全31編の短編小説集。1000年生き続ける男、逆に言えば何が起こっても死ねない男・戦士カイムの戦いと果てしない旅の日々を綴った短編集。永遠を生きることの残酷さと限りある生の切なさと尊さを全編に渡り詠っている、ある意味では長編小説。カイムは冷酷な戦士のようですが、旅の途中での老若男女・多彩な人々との関り合いなどで見せる温かさや優しさも備えています。美しさと哀しさが全編に漂う素晴らしい作品です。全編を通した一貫していることは、千年(永遠)を生きることの悲しみと哀愁ですね。
 超短編小説集なのですが、その短いページの各編でも起承転結があり、完結させる筆力は著者ならではの力量。私はゲームは全くやりませんが、そんな事は関係なく1冊の本として楽しめる一冊です。
★★★★☆