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「世界の奇跡」日本の天皇が滅びなかったワケ





2019年4月30日に天皇陛下が譲位、5月1日には皇太子さまが即位され、改元が行われます。
平成の終わりに、皇室の意義や歴史について考える機会がある人が増えているのではない
でしょうか。



歴史上、世界各国の多くの皇室(帝室)や王室は悲惨な終わり方をしています。国民や外敵に
追放されたり、処刑されたりしました。世界の王朝が頻繁に変わるなかで、日本の皇室だけが
万世一系を維持し、天皇は今日、世界に唯一残る「皇帝(emperor)」となっています。
その存在は「世界史の奇跡」と言えます。



清王朝の末期、隣国の中国は日本と同じように、皇室を残し、立憲君主制の下、近代化を進め
ようとしました。しかし、それは失敗しました。いち早く近代化に成功した日本では、皇室が
大きな役割を果たしましたが、中国では、皇室が近代化の障害になると見なされました。
この違いは、いったい何でしょうか?



(中略)



天皇の存在が日本の近代化成功のカギだった



日本も中国と同様に、ヨーロッパのようなブルジョワ階級は未成熟でした。代わりに、従来の
特権階級であった藩主や武士が近代革命を担いました。



17世紀のイギリス市民革命でも、18世紀のフランス革命でも、国王をはじめ多くの特権階級が
処刑されています。フランス革命では、日々の大量処刑を迅速に執行するために、ギロチンが
考案されました。ヨーロッパの近代革命は血生臭い暴力が付いて回り、それは中国の易姓革命
と同質のものでした。



日本の近代化である明治維新では、そのような血生臭い暴力は最小限に抑えられました。
革命への穏健な姿勢が終始貫かれ、日本独自の絶妙なバランス感覚で体制の旧弊を漸次改変しな
がら、近代化が進められていきました。日本の近代革命は「アンシャン・レジーム(旧体制)」を
急進的に打破していく、ヨーロッパ型の近代革命とは根本的に異なっています。



日本の近代化が穏健に進められた背景として、天皇の存在が大きかったと思われます。最後の
将軍徳川慶喜は自らの体面を失うことなく、政権から退きました。それは、将軍よりも格上の
天皇に、それまで預かっていた政権を返上するという大政奉還の建て前を通すことができた
からです。



約270年間続いた江戸の将軍が、薩摩・長州という辺境の家臣に屈服したという恥辱にまみれる
ならば、幕府勢力は死力を尽くして、革命軍と戦い、血で血を洗う陰惨な内戦に発展した可能性
があります。幕府はあくまで大政奉還により、天皇に恭順したのです。超越的な天皇の存在が
日本の危機を救いました。



ヨーロッパの民主革命の闘士から見れば、天皇を頂点とする明治の新生国家は、王政復古への逆行
と映ったかもしれません。このとき、新生国家を共和制とせず、立憲君主制にしたのは、維新の
革命者たちの深遠な知恵でした。



天皇と共に歩んだわれわれの父祖



首班や内閣は天皇に対して、責任を負います。そして、彼らは天皇によって大権を与えられます。
この大権の実効性を強固なものにするため、多少、天皇を神格化しすぎたというところもあります。
しかし、そのような天皇の存在が、困難な改革を実現させるのに大きな役割を果たしたのです。



大政奉還と同様に、廃藩置県は藩の小君主(藩主)たちの実権を天皇に返還させるものでした。
封建諸侯である彼らが、自らの特権を手放したのは、彼らよりもずっと身分の低い足軽上がりの
革命者(西郷隆盛大久保利通など)が命じたからではなく、天皇の大命を仰いだからでした。



武士の忠義からして、天皇の大命には逆らえず、封建時代の実質的な実力者であった彼らのほとんど
は潔く身を引いたのです。その潔い精神というものは、他国の特権階級には見られません。彼らの
多くは処刑台の前に引きずり出されるまで、悪態をつき、暴言を吐きながら抵抗しました。



日本には、鎌倉幕府から江戸幕府に至るまで、将軍という世俗の権力者の上に、天皇という超越的
な存在がありました。この二重権力構造が続き、天皇制が維持されたことが近代日本に幸いしました。
日本が過激に社会秩序を崩壊させることなく、緩やかな変革を実現することができた最大の理由が
ここにあります。



中国は王朝がコロコロ変わる易姓革命を繰り返したため、天皇のような国家の中核存在を持つことが
できませんでした。維新の革命者が孫文のように共和主義を掲げ、天皇制を廃止していたならば、
日本も中国と同じように、無秩序と混乱に陥っていたことでしょう。



われわれの父祖たちは、つねに天皇と共に歴史を歩んできました。来る5月1日の新天皇の即位以降も、
その歩みを一層、輝かせたいものです。



http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/