理想の中小企業オーナー経営者

競馬

<11月9日>(水)

○以下は某社中小企業の社長から拝聴した話。


オーナー企業ってのはいいもんだよ。会社は自分の王国だからね。
たまに証券会社がやってきて、御社を上場すれば20億円入りますよ、
なんてことを言う。あほ言えって断りましたよ。
そりゃ証券会社は、幹事手数料で儲かるんでしょうね。
もちろん僕にとっても20億円は大金だよ。1%で回しても年間2000万
だからね。でもね、そんな金を手にしたら僕はボケちゃいますよ。
そんなことより、今のペースで働いている方がいいの。
IRだとかで、引っ張りまわされるのはかなわんし。



だいたいね、今は上場のコストが高過ぎる。それを維持するのも
人手がかかって大変だ。なんで監査法人にあんなに金払わなきゃ
いかんのか。オリンパス大王製紙も防げなかったのにね。
それに会社を公開して、民主主義の経営になって、それで会社が
繁栄するならいいよ。でも、本当に必要な決断は、民主主義じゃ
なかなかできないんだから。
オーナー会社なら、「ばかもん、俺の言うとおりにしろ!」で通る。
こんな結構な体制を捨てたくはないね。




いったん公開したうえで、会社を非公開に戻したケース、結構あるんだよ。
××という会社、聞いたことある? ○○で世界全体の5割のシェアを
持っているけど、年商はせいぜい500億円。大企業から見れば、ちっぽけな
もんでしょう。でも独立しているからこそ、世界を相手にしていられる。
公開してしまうと、いつ買収されちゃうかわからないでしょ。
だったら非上場の方がいいよ。




会社にとって最大の問題は、跡継ぎをどうするかってことだね。全国に中小
企業は500万社。どこも悩みは後継者の育成だ。息子に継がせることができれ
ばいいが、これが意外と難しい。うちの息子も支社を任せているけど、まだ
まだ一人前じゃないからね。これをどうするか。そこでいろんなケースを調
べてみた。




普通は親が会長になって、息子を社長にする。これ、よく失敗するんだよ。
なぜかというと、妻が息子の側についてしまうから。そりゃそうだよな。
夫は赤の他人だけど、息子は自分が腹を痛めて生んだ子なんだからね。
奥さんの動向を見ているうちに、会社の役員たちも社長の方を向くようになる。
結果として悪い情報が会長には届かなくなる。気がついた時には、会社がおか
しくなっている。そういう例はたくさん見たよ。




うまく行ってるケースは、親が社長をやって息子を専務にするパターンだね。
ちゃんと息子を見張りつつ、親が最後まで権限を手放さない。
文字通り死ぬまでやるわけだ。息子にとっては迷惑かもしれないけど、その方が
親が死んだあとはやりやすいだろう。僕もそうするつもりだよ。
憎まれるかもしれないけど、息子は親を否定するくらいじゃないとね。




外から見ていて感心するのは○○グループのケースだな。親がギリギリまで頑張って、
いよいよ自分が引くという段になって、長年尽くしてくれた腹心の役員全員を一緒に
辞めさせてしまった。今から思えば、そのために子会社をいっぱい作って、ポストを
用意してあったんだな。うるさいのがいなくなるから、後を継いだ若社長はやりやす
かったと思うよ。あそこの代替わりは成功だった。
でも、そういう例ってなかなか少ないんだよな。




○話を聞いていて、ふと映画『砂の器』のラストシーンに出てくる親子の姿を思い
 出しましたな。よかった、ウチはサラリーマンの家系で。



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