麻生太郎 「国際社会でも沈黙の美徳が通用するかというと、残念ながらそれはない。
つい先日、こんなことがあった。オレのアメリカでの知り合いに、インテリで金持ちの老婦人が
いるんですが、彼女は『孫が日本のアニメ“ポケットモンスター”に夢中になっているけれど、
あれほどショッキングなものはないわ』って言うんです」
麻生太郎
「そう。なぜなら、ポケモンは一言もしゃべらない。『キュ』と『キュキュキュ』しか言わね
えんだから(笑)」
宮崎哲弥
「ハッハッハッ(笑)」
麻生太郎
「いや、彼女が驚いたのは、ポケモンがしゃべらないにもかかわらず、コミュニケーションができる
能力を持ってることなんだ。『初めに言葉ありき』のキリスト教社会にとって、これは驚天動地の
キャラクターだというんだな。言葉がなくとも『ハート・トゥ・ハート』でコミュニケートできる
文化をアメリカに紹介したのは、じつはポケモンだというわけ。
アメリカは自己主張してナンボの社会です。日本人はあまりしゃべらないことから『何を考えてるの
かわからない』と、不信感を抱かれがちだった。ところがポケモンを見た老婦人は納得した。
『日本には、しゃべらなくても意思が通じるカルチャーがある』って(笑)。ポケモンをこんなふうに
捉えるインテリもいるんだなあと思って、感心したね」
麻生太郎
「逆に言えば、日本人ならちょっと言い難いと思うようなことでも、いざ話してみればちゃんとフェアに
受け止めてくれるのがアメリカ社会の特徴でもある」
「諸君!」2008年2月号 麻生太郎「『保守再生』はオレにまかせろ!」(聞き手:宮崎哲弥)より