北朝鮮の錬金術

競馬


以下、ネットでの拾い物です。


錬金術!?組織ぐるみの集金−送金システムを検証する』

別冊宝島221「朝鮮総聯の研究」より

朝銀信組疑惑】錬金術!?組織ぐるみの集金−送金システムを検証する


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朝銀とその傘下に蠢く関連企業は、
在日の資産を絞り取る集金マシーンか?
「個人送金による六百億円」説より、
朝銀信組を巡る不透明融資こそが問題だ!

伊勢暁史
〔ジャーナリスト〕


 朝鮮総聯にはいろいろな傘下団体がある。在日本朝鮮人商工連合会、同朝
鮮青年同盟から同朝鮮人医学協会、そして同朝鮮信用組合協会まで。また関
連事業体には朝鮮総聯中央学院朝鮮通信社金剛山歌劇団、東海商事株式
会社などがある。
 ところがここに名前の出ない関連企業がパチンコ会社・インターナショナ
ル企画であり、サラ金会社・共同開発だ。実はこれらの企業が「北朝鮮への
献金」の重要なカギを握っている。


優良パチンコ店、突然の解体


 娯楽産業の雄として全盛を極めるパチンコ業界だが、このパチンコ屋さん
をめぐって奇妙な事件が平成四年七月に群馬県前橋市で発生した。前橋市
田町にあるパチンコ店「ゴールド」がこの年の七月二十日、突然解体された
のだ。このパチンコ店の所有者は有限会社ゴールド。経営権をめぐってトラ
ブルが発生し、代表取締役の申徹(シン・チョル)氏が代表取締役の職務を
停止されてしまったのである。
 有限会社ゴールドは昭和五十八年五月に設立され、前橋市内にもう一軒パ
チンコ店を経営していた。経営は順調で一店あたり年間八千万円近くの純益
を誇っていたという。申氏の経営手法と私物化が追及されての「職務停止処
分」だった。その結果が優良パチンコ店解体につながったと見ればことは簡
単なのだが、この会社の取締役に、ある人物がからんでいたことから複雑な
様相を呈しているとされたのである。
 その人物とは東京都豊島区に住む安商宅(アン・サンテク)氏。安氏は日
本名を安田春吉と言い、在日北朝鮮国会議員であり朝鮮総聯の大物、さらに
総聯直系の貿易商社・東海商事の会長を務めている。
 当時、この事件を取材した知人の記者は、
「関係者を取材して分かったのは、表向きは申氏が代表取締役の地位を利用
して会社の金を私的に流用したということになっているが、内実は安氏グル
ープによるゴールドの乗っ取りだった。安氏は故金日成金正日主体思想
の信奉者。北朝鮮へ多額の献金をしてきたことでも有名な人物だった。その
功績により平壌市内に安商宅通りというものまでできている。彼らがパチン
コ店の売上げの多さに目をつけ、献金ラインに組み込もうとしたものだと思
った」と話す。
 この実態を、北朝鮮の政治体制を批判する「民主統一連盟」の李光(イ・
グワン)議長は次のように解説する。
北朝鮮の経済破綻は目に余るものがある。その補填を膨大な在日の人たち
献金で賄っている。献金は毎年行なわれる北朝鮮の祝祭日に向けて集めら
れたりするが、特に金日成が死亡した時には三百億円もの金を朝鮮総聯は集
めようとした。結果的には集めることができなかったが、とにかく金がほし
北朝鮮政府が狙っているのは、朝鮮総聯が持っているという二十兆円の資
産。
総聯は日本各地に不動産だけでも相当持っている。ところが総聯のなかで
は、せっかく営々として蓄えてきた財産を金王朝に持って行かれることに批
判が出始めている。
そこで目をつけたのがパチンコ産業。総聯では直営のパチンコ店を持ってい
るが、それだけでは足りず、さらに拡大を図ったのがこの事件だと考えられ
る」
 李光議長の言葉を裏付けるかのように、優良パチンコ店はいま、形を変え
て経営されている。


直営パチンコ店の”錬金術


 ところで、朝鮮総聯直営のパチンコ店は実に巧妙なシステムで運営されて
いる。
 東京都港区新橋のK・Lセントラルビルという建物のなかにある「株式会社
インターナショナル企画」は昭和五十八年十二月、四千五百万円の出資金で
設立された。取引銀行は朝銀東京信用組合(本店)と朝銀神奈川信用組合(本
店)となっている。平成五年十二月期の決算では八十七億八千万円もの「年収
入高」を記録した。
 業種別売上ランキングでは五千六百十四社あるなかで六百二十一位の優良
企業。代表取締役の清水章氏は朝鮮名を鄭春植(チョン・ジュンシク)とい
い大正十年一月生まれの七十四歳だが、この人は朝銀東京信組に昭和二十六
年から勤務、つまり朝銀ができてすぐに勤めはじめ、昭和五十三年から退職
する同五十八年五月まで朝銀東京信組理事長だった人物。
 インターナショナル企画設立後の昭和六十三年二月から社長となってい
る。
 ここまで言えばはっきりするとおり、この会社は朝鮮総聯のレッキとした
「関連会社」で朝銀がバックアップする会社である。
 某大手調査会社の資料では<会社の特色>欄に「社名には『企画』がつい
ているが、実際はパチンコ店の経営である。不動産売買、貿易、健康食品販
売、コンサルタント業と種種の事業を行って来たが、現在ではパチンコ店経
営専業となっている」とある。
 この会社は山形市に大型パチンコ店「パーラー国際山形東店」(二階建て、
延九六五・一七平方メートル、パチンコ台二百八十八台、パチスロ六十台)、
天童市に「パーラー国際天童南店」(二階建て、延九二四〇平方メートル、パ
チンコ台二百五十台、パチスロ五十台)を所有している。
朝鮮総聯直営のパチンコ店」といわれるものはこのほかにも有限会社北栄
商事(山形県酒田市に一店、同鶴岡市に三店、秋田市に一店)、有限会社IPU商
事(山形県新庄市に一店)、有限会社東馬商事(群馬県富岡市に一店)、有限会
社西原産業(岩手県雫石町に一店)などがある。
 前出の李光議長は「インターナショナル企画を核に北栄、IPU商事、東馬、
西原などが力を出して、総聯のパチンコ部隊を形成している。これらの店に
貸す資金は朝銀とその系列のサラ金会社が担当する。ノンバンクを二つ経由
させる(後述する朝銀系ノンバンクの朝銀総合ファイナンスや共同開発など)
と利息は月に八%とれる。年間では一〇〇%近い暴利が転がり込む仕組みだ。
その何パーセントかは確実に北への献金となっている。それは百億単位の金
だと
思う」と言う。一店が一億円を借りるとすると、年で一億円の利益が朝鮮総
聯系の金融機関やノンバンクに入ると言うのである。それが十店なら十億
円、一店が十億円借りるとすれば十店で百億という膨大な資金が生まれるこ
とになる。
 つまり、朝銀とその傘下にあるサラ金会社がこれらの企業からの集金マシ
ーンだ、と言うのである。
 これまで「北朝鮮への送金問題」はすべて北朝鮮に帰国した人たちの親族
による送金とか、在日の人たちが祖国訪問に際して、親族に手渡すお金や、
「それらの親族が祖国
での待遇を少しでもよくしてもらうための政府高官に対するリベート」や国
家に対しての「献金」だけのように言われてきた。その額だけで「年間六百
億円」と推測されてきた。ところが李光議長はパチンコ産業と北朝鮮系金融
機関による「送金問題」こそが本筋だと指摘する。


朝銀」はだれのものか


 ここで、「朝銀」と通称で呼ばれる金融機関の歴史とその実態を見てみよ
う。
 昭和二十七年六月、信用組合法に基づく
大同信用組合という金融機関が台東区浅草に産声を上げた。対象は在日朝鮮
人たちで、彼らが組合員となった。戦前、戦後、日本人の差別意識と政府に
よる不平等政策で在日朝鮮人は辛酸をなめてきた。その彼らの自主的金融機
関として期待されての大きな船出だった。そしてこれを機に全国に八つの在
朝鮮人のための信用組合が生まれた。
 設立にかかわった元朝鮮総聯幹部で同信組の役員を勤めたT氏は次のように
言う。
朝銀在日朝鮮人が自分で商工業を起こし自立の途を歩き始めるために役
に立つ金融機関として始まったものだった。当時はまだ差別があってほかの
金融機関ではなかなか金を貸してくれなかった。信用組合の職員も役員も
皆、必死で働いた。いまのように北朝鮮のために働いているんではなく、在
朝鮮人のためにやった」
 この老元幹部の言うように設立段階では在日商工人たちの経済活動にとっ
て大きな役割を果たしてきたのも事実だ。朝鮮総聯はこの組織について『朝
鮮総聯』に次のように書く。
「こんにち日本各地に設立された朝鮮信用組合は、在日同胞の企業活動と日
常生活に根をおろした真の民族金融機関として着実に発展している。/在日同
胞と同胞商工人は、日本の金融機関から融資をうける際に、いわれのない民
族差別と不利な付帯条件をつけられている。/日本各地の朝鮮信用組合は、つ
ねに同胞の立場にたって企業権、生活権をまもるために事業を展開してい
る」
 しかし、前出の老元幹部は「それがおかしくなるのが昭和三十四年十二月
朝鮮総聯が始めた祖国・朝鮮民主主義共和国への在日の帰国運動からだっ
た。これでおよそ十万人が北に帰ったが、一九七〇年代に入ると金日成、金
正日王朝国家への忠誠心ばかりが先行するようになってきた。その後は在日
朝鮮人のためではなく、金王朝のための金融機関に堕落しはじめた」と言う
のである。
 その実態はのちほど書くとして、大同信用組合は設立一年後には朝銀東京
信用組合と名称を変え、各地の「北朝鮮系」信用組合を糾合して協会を作
り、全国組織化した。これが在日本朝鮮信用組合協会(朝信協)で、現在全国
各地の三十八の信用組合を傘下に置き、百七十八の店舗と二兆三百三十一億
円の預金量、貸出金二兆一千七百六十四億円、組合員二十一万七千人という
大組織に育っている。
「これらの規模は地方銀行の中位行に匹敵する。ところがこれが正常に機能
すれば在日朝鮮人のために大きな力となるはずなのだが、在日朝鮮人のため
ではなく、総聯の下部組織として金正日体制に奉仕する機関となっているの
が問題だ」と言うのは朝鮮信用組合に詳しい金融ジャーナリスト。
 この人は、「朝鮮信用組合協会の集まりに出たが、そこでは総聯の幹部が
すべてを仕切っていた。協会の役員や大手朝銀信用組合の理事長はその総聯
幹部の部下のようなスタイルで終始していた。なぜかと言えば彼らはすべて
総聯の幹部に指名されて理事長や役員になっているからだ。もっともこの集
まりには総聯がOKを出した人だけを招待していて、ある種の秘密会議の雰囲
気がしている」とその実態を解説している。
 つまり朝鮮総聯が中位行規模の銀行をもっているのに等しいというわけ
だ。


「在日」の資産を狙え


 さらに驚くべきことに、朝鮮信用組合協会はノンバンクのファイナンス
関とサラ金会社まで傘下にもっているのである。
 ノンバンクは「朝銀総合ファイナンス株式会社」という。「本店」は東京
都新宿区西新宿1-1-6、ミヤコ新宿ビルの五階にある。設立は昭和六十二年九
月。年収入高は平成四年三月で十三億円。役員には朝銀大阪、同愛知、同福
岡、同東京などの理事長が入っている。
「この朝銀総合ファイナンスを作るに当たっては総聯のなかで大変な議論に
なった。反対派の主張は『もともと在日の人たちのために作ったはずの朝鮮
信用組合が何故に高利で貸すサラ金会社を作らなければならないのか、むし
ろ低利で貸すことをもっと考えたらどうか。利益追求第一主義は総聯の姿勢
としても問われるはずのものではないか』というものだった。しかしこれら
の正論は多数派の『利益追求が何故悪い。祖国のために活動してこそ総聯で
あり朝銀信組だ』という意見に押されてしまった」(元総聯幹部〕という。
 そのためもあって、朝銀総合ファイナンスの評判は在日朝鮮人の間では最
悪のもの。ある大阪の在日商工人は「あんなものはバブルに乗ったもので、
あそこから街金に金が流れ出していた。地上げ屋や怪しげな仕事のところに
ばかり流していたのだからバブルが弾けて回収が困難になっている。朝銀
用組合のなかで大阪、東京、福岡なんかが大量の不良債権を抱えたのもあそ
こがパイプ役としてかかわったからだ」とも証言する。
 ところがこの会社の大手調査会社の資料を見て驚いた。この資料によると
<従業員>は計六名、そして<従業員備考>の欄には
「上記(従業員欄のこと−筆者注)は株式会社共同開発の従業員も含める」と
あるではないか。
 ここに出てくる株式会社共同開発こそ朝鮮信用組合協会が作ったサラ金
社なのだ。
 このサラ金会社は本店も朝銀総合ファイナンスの本店と同じ新宿区西新宿
のミヤコ新宿ビルの五階にある。昭和六十三年六月の設立でこちらの従業員
は六名。
 つまり従業員はダブッて勤めている様子がうかがえるのだ。この会社と関
係のある商工人は、「朝銀から朝銀総合ファイナンスに回されていってみる
と、おなじフロアーに共同開発があり、あそこを利用していただきたいとい
ってくる。完全なグルだ」と憤慨する。
 資金と客が朝銀信組→朝銀総合ファイナンス→共同開発と流れ、利潤の吸
いあげが逆に上がっていっている様が彷佛としてくる。そしてその利益がど
こかに消えている(もっとも朝銀信組から直接共同開発に資金が流れているこ
とも考えられる)。
 しかし、この会社こそ総聯の利益誘導部隊の感が強い。それはこのサラ金
会社の年収入高を見るとはっきりしている。
 朝銀総合ファイナンスが十三億円なのに対して共同開発は平成四年三月で
三十九億六千万円と三倍、資本金はファイナンスの二十分の一の五百万円だ
からウマミは大変なものではないか。
 前出の老幹部の話のとおり、そして朝銀総合ファイナンスの設立に反対し
た人たちが主張したように、これらの機関は在日朝鮮人から利益を絞り取る
ものであって、在日の経営権とか生活権に根差したものでは決してない。
 前出・李光議長は、「今の朝銀信用組合朝鮮総聯と同様、金正日王朝の
ための機関になっている。総聯が金王朝献金する場合に、在日から集まら
ないようなときにはこの金融機関が用立てをしていると思われる事例が多
い。平成五年からマスコミに指弾を受けている問題はそうしたことが背景に
ある」ともいう。


「送金王」殺害される


 マスコミに指弾を受けた事例に触れる前に、この朝銀信組や朝銀総合ファ
イナンスにかかわっていた人物の奇妙な殺害事件を取り上げておこう。
 平成六年四月二十二日、新宿区須賀町の路上で街金業者、龍神興業の会
長・具次龍(ク・チャリョン)氏が愛人宅から車を出そうとしているところ
を何者かによって銃殺された。具氏は「朝銀の陰の理事長」「北朝鮮への送
金王」などと呼ばれていた。
 具氏を知る人物は、「確かに現職の大臣や国会議員と親しくしていて金の
面倒を見たりしていた。この人はケチで大口をたたく癖があったが、それは
苦労をして金融業者として一定の成功をしたからだろう。そうはいうものの
北朝鮮への献金はそれなりにやっていた。全部を合わせると数億円にはなる
だろう。それだけ名誉職がほしくて動いていたのは事実だ。それにこの事件
の特徴的なことは殺された時期がアメリカが北朝鮮経済制裁をやろうとし
ていた時期で、日本からの送金に目を光らせ始めたときでもあって、いろい
ろな線が囁かれたことだ」
という。
 一説には貸金のトラブルだともいわれ、もう一方ではCIA筋ではないかなど
の話が出た。目撃者もいたにもかかわらず、平成七年二月現在も犯人は挙が
っていない。
 具氏は昭和三十年頃、茅場町周辺に事務所を開き、街金業者して出発し
た。浅草近辺の人を対象にしたものだったが、戦後の復興景気に合致して成
功を収めた。もちろんこの資金は朝銀信用組合からの出資が主体だった。つ
まり朝鮮総聯と朝信協が育てたともいえる人物だった。
 彼は朝鮮総聯傘下の在日朝鮮人商工連合会の幹部になったが、トラブルの
絶えないことでも有名で四年前には拉致、監禁されるという事件を起こし、
愛人に数百億円をだまし取られたりしている。
 この事件には裏があると取材に動いたが、事業を継いだ子息は「今は何も
話せません」と言うばかりだったし、知り合いの在日朝鮮人商工連合会の幹
部も「その件について
は何もコメントすることはない」と取材拒否をしていた。しかし彼が朝銀
組の資金で稼ぎ、その内の何割かを北への送金に当てていたことは間違いな
い。


限りなく犯罪に近い疑惑の数々


 ところでこの事件に先駆けて出てきたのが「朝銀信組疑惑」の数々だっ
た。
 そのひとつひとつをここに列挙し、解説してみよう。


1.朝鮮出版会館の融資疑惑
 この事件を最初に取り上げた週刊『AERA』(一九九三年三月三十日)が指摘
したのは、せいぜい三十億円前後の担保価値しかない東京都文京区にある朝
鮮出版会館を担保に、朝銀東京信用組合朝鮮総聯の財政局副局長という個
人に十七億三千万円の巨額融資をしていた(貸し出しは平成二年に行なわれて
いた)こと、さらに同じ建物に朝銀大阪信用組合、同神奈川信用組合などが六
十五億円の融資を行なっていたことである。しかもその融資先は幽霊カンパ
ニーと分かるものや、実際には存在しない事業所だったのである。
 これは一目瞭然の朝鮮総聯朝銀信用組合の合作劇であった。この事件が
明るみに出て朝銀東京信組の幹部はあわてて、管轄の東京都労働経済局信用
組合課に出向き謝罪した。しかし問題はこの総額八十二億三千万円の金がど
のように使われたかである。
 前出の老朝鮮総聯元幹部は「それは間違いなく北への献金に使われた」と
言う。この人の証言では、「送金のやり方はかつては新潟港から出る北朝鮮
向けの船に乗せた。その際に、砂糖袋の中に現金を入れることもあったし、
船にいる北朝鮮政府の幹部に手渡したりしたが、いまでは第三国、香港とか
を通じて送ったりしている」ともいう。
事情に通じた人の話だけに可能性の高い証言といえるだろう。


2.八王子・朝鮮総聯中央学院のズサン融資
 実は融資の実態が不透明なものは朝鮮出版会館だけではなかった。同じく
AERA』(九三年八月三日)が捜し当てたのが東京都八王子市叶谷町にある朝
鮮総聯中央学院のものだった。
 ここは一〇、五三二平方メートルもの広大な敷地をもっていて、朝鮮総聯
の一部局といわれる。所有者は関東興業(その前の所有者は韓徳銖朝鮮総聯
長、金日成死去のセレモニーに際してナンバー3の位置にいた人物)だが、こ
の会社は総聯本部の建物の所有者であり、総聯の関連不動産管理会社。時価
はいくら高く見積もっても約二十億円程度。ここに昭和六十一年から平成四
年にかけてなんと総額百三十七億円もの根抵当権がつけられていたのであ
る。
 それらを融資した金融機関は五社。朝銀東京信組、同神奈川信組、同福岡
信組そして、先に書いたサラ金企業の共同開発とたくぎん抵当証券だった。
 問題は根抵当権の異常な額だけではなかった。ここでも返済が不可能だと
思われる個人や実態の知れない企業に融資していたのである。その内訳は、
朝日サンサ(サンサとはハングルで商事会社の意味)に二十億円、朝鮮特産物
販売に二十一億円、そして徐明子(ソ・ミョンジャ)氏に二十六億円、沈光
允(シム・クァンユン)氏に十一億円、新栄通商に二十四億円、ナビックジ
ャパンに二十億円といったもの。
 ところが徐氏は主婦(夫は当時朝銀神奈川信組の常務理事)、沈氏は九州の
福岡に住み、朝鮮総聯福岡県本部の職員(警備員のような仕事をしている)だ
った。また朝日サン
サという企業は東京・築地に本社登録はしているものの、実態はかなり怪し
い会社なのであった。ここでも前述のように百三十七億円という金が果たし
て何に使われたのか疑問だ。
 そこで謄本をとって融資の実態を調べて驚いた。根抵当権の設定が平成二
年に集中していた。七件のうち四件がこの年であり、総額八十七億円にも上
っていたのである。
 この平成二年という年の十月十日、北朝鮮では「朝鮮労働党四十周年」の
祭典が大々的に開催されていたのである。その半年前には「金丸訪問団」が
北朝鮮に行っていることも無関係とは思われない。この資金に回された疑い
が濃い……という人たちに、取材していて何人も会った。
 ここまでは他誌が書いたりしたものを、再度調べ直してみたものだが、次
ミニコミ紙に出ていた記事を頼りに、あるいは人づてに聞いた事実を元に
取材したものであ
る(『諸君」一九九四年十二月号に発表したものに加筆)。実に複雑な人間関
係とズサンな、というだけでは済まされない「無責任」あるいは「犯罪的」
とすらいえる朝銀の体
質が明らかになってくる。


3.朝銀神奈川信組をめぐる奇っ怪な事件
 鹿児島市に本社のある「タイガード映画社」の社長だった福田哲三氏は、K
という神奈川県下で金融業をやっている人物の紹介で、平成四年八月に朝銀
神奈川信組から七億五千万円の融資を受けた。以下は福田氏の悲憤の訴えの
概要である。
 福田氏はKに五億円の借り入れがあり、その返済に当てるのと、他は事業資
金に使うために申し込みをしたものだった。
 Kは「自分の兄はパチンコ機器の大手メーカーの創業者で社長をやってい
る。この朝銀には兄の会社が三十億円の預金をもっているから大丈夫だ」と
話したという。
 朝銀サイドは副理事長と融資部長も立ち会い、福田氏に組合員になること
を条件にOKを出した。組合員になるためには一千万円の出資が必要というの
で、それは融資額から差し引くことにした。もっともこの出資金は融資が下
りた後にいつでも引き出せると説明した。ところが融資実行の十日ほど前
に、福田氏は朝銀から「融資が実行されたときに担保権の設定費用、出資金
を引き出すのに必要だから」と言われ、朝銀普通預金払い戻し請求書三、
四枚に金額
欄空白のまま取引印を押したものを作成させられ、担当者に取られた。
 福田氏は融資実行の日に朝銀に行って通帳記入をして驚くことになる。確
かに通帳には七億一千五百九十九万五千八百十四円(七億五千万円から半年分
の利息を引いたもの)が入っているが、その日のうちに七億円が下ろされてい
た。Kが引き落としたのだ。
 さらに出資金と担保設定料の合計千四百五十万円も差し引かれていたとい
う。
 朝銀に事情を聞いたが「知らない」と言うばかりだった。
 一種の詐欺もどきの事件で、福田氏は民事・刑事で告訴を検討している。
訴訟に発展すれば、朝銀神奈川信組は神奈川県をテリトリーとする限定金融
機関であるにもかかわらず、鹿児島市の人物に融資していることが越権行為
で違法性があること。さらに融資した本人を知っているにもかかわらずKに多
額の金を下ろさせていること、詐欺まがいのやり方を使って預金払い戻し請
求書を書かせていること、さらにはこの融資がKの実兄であるパチンコ機器メ
ーカー社長の三十億円の預金を基礎に進められたもので、「預金等にかかわ
る不当契約の取り締まりに関する法律」が禁止している導入預金ではないか
−などが問題となろう。


4.在日のための朝銀信組がその在日の店を潰した事件
朝銀は本当にわたしたちの味方か」と告発しているのは今は京都に住む朴
春仙(パク・チュンソン)さん。
 彼女は昭和五十二年四月十日、目黒にお好み焼きや「福よし」を開店し
た。開店資金は、それまで苦労してためた四百八十万円が朝銀東京信組上野
支店に預金としてあったが、他に七百六十五万円を同信組目黒支店で借りる
ことにした。
 朝銀サイドが出した条件は保証人を四人つけろということだったので、当
時入っていた朝鮮総聯の下部組織「目黒親睦会」の人たちに依頼した。建設
業者Yなどだった。惜りた金の返済は滞りなくやっていたし、店も順調で将来
性があった。
 ところが一年後に問題が起きた。
「当時わたしは離婚した夫との間がもめていた。その人がわたしの店に来
て、一緒に住んでいた子供を連れて行ってしまった。それで知り合いに店の
カギをあずけて京都に行った。二、三日して話がついたので帰ってくると店
にはベニヤ板が張られ、なかの金庫も持ち去られていた。保証人に頼んだYた
ちがやったことでした。Yのところに押しかけて抗議すると暴行を働く、『も
うおまえの店じゃない』と言う。こんなことあるかと朝銀目黒支店に出掛け
て抗議した。ところが『あんたの保証人がやっていることで知らん』とい
う。警察に行っても民事不介入とかで取り合ってくれない。結局、その店は
続けられなかった」という。
 その後、朴さんは弁護士に相談し訴訟に持ち込むのだが、無念にもささい
な金額で示談となってしまう。その後、知り合いに紹介され相談した椎名麻
紗枝弁護士が朝銀東京信組に掛け合った。
朝銀サイドも非を認め、彼女の生活再建に力を貸すという約束はしてくれ
た。もともと朝銀は朴さんたち在日のためにできた金融機関。本来の精神か
らいったら、むしろ積極的に相談に乗るべきだった。そうすればもっと信頼
される金融機関になるはずだ」と話している。
 ここまで見てきたように東京、大阪、福岡、名古屋などの大手はもとより
全国各地に散らばっている朝銀信組は不透明性を改めて、本来の精神に立ち
返るべきだろう。前出の李光議長はじめ何人もの人たちが指摘するような
北朝鮮金正日王朝におもねる」「北朝鮮への送金(献金)に血道を上げる
ような」姿勢は取るべきではない。
 一説には朝信協は不良債権を何兆円も抱えているといった声も聞こえ始め
ている。これもまた日本の経済社会にあるものとしてのルールを逸脱した
り、在日朝鮮人の経済活動と生活権を守るといった本来の精神を忘れた報い
ではないのか。


さらなる問題


 北朝鮮は平成六年暮れに米朝会談で一定の合意をもった。それに基づいて
韓国、日本も北朝鮮に対する経済援助をすることになっている。その詳細を
詰めていく作業がこれから展開されるのだが、国家経済はかなり苦しい。
 一九九三年度の北朝鮮の対外貿易の実態を日本貿易協会(ジェトロ)が発表
しているが、それによると「39カ国・地域の通関統計に基づきジェトロが推
計したところでは、93年の北朝鮮の輸出人総額は前年比2.4%減の27.5億ド
ル。このうち輸出は同8.5%減の9.8億ドル、輸入が同1.4%増の17.7億ドルで、
貿易赤字は前年比1.1億ドル拡大して7.9億ドルとなった」と指摘している。
 通産省の関係者は、「ソ連の崩壊で対中国への依存度を急速に拡大してい
るが、その中国も経済的には日本の借款に依存しているほどで懐具合は決し
てよくない。それに冷戦構造が崩壊したことを受けて、北朝鮮政府は孤立感
を深めている。一九八四年に合弁法(北朝鮮では合営法という)を作ったが、
現実には在日の人たちとの計画・案件がやられているだけ。実際にはこれま
で二十案件が実施に移されたにすぎない」と、そのお寒い実態について説明
している。
 その意味では米朝会談合意に基づく日本や韓国からの援助は北朝鮮にとっ
て頼みの綱である。それまでは朝鮮総聯や帰国者を人質にした献金に頼って
いかざるをえなかったのだろう。ところが、朝鮮総聯の国際部長・宋岩佑
(ソン・アム)氏は、「日本ではなんでも送金問題にかこつけて北朝鮮を非
難するがそれは本当ではない。北朝鮮は国家ですよ。たとえ年間の献金が六
百億円としてもそんなのは国家財政のほんの一部でしかないでしょう。献金
問題というのは総聯を誹諺するデッチ上げだ」と語って全面的に否認してい
る。
 しかし、李光氏は、「北朝鮮への献金額は六百億円を超えているだろう。
わたしだって向こうにいる従兄弟とか姪のために数百万円を送っている。そ
のうちの三割から五割を国が天引きしていることを知っている。それだけで
なく朝銀信組や総聯傘下の企業も第三国を経由して献金しているからその額
だけでも相当なものになる」というのである。総聯がいくら否定しようと
も、カネをめぐる数々の疑惑は解消しないのは、見てきたとおりである。
 さらに米朝会談からはその「帰国者の人権問題」がスッポリと欠落してし
まっている。この人権問題こそが日朝問の正常化の上で欠かせない問題であ
ることは言うまでもない。
 今後、北朝鮮が国際社会に参加してくるうえでも一日も早くこれらの問題
をクリアすることが必要なのではないか。


→ http://hackjaponaise.cosm.co.jp/NorthKorea/bbslogs/nkoreabbs1675.html


真偽の程は兎に角・・・。
在日韓国・朝鮮人は早く強制送還するべきですね。