ネットゲリラ様 『沼津港に初カツオ70トン荷揚げ』 より
奇跡的な出来事のようです。
エントリー自体が、珠玉の短編小説ですね。
→ http://shadow-city.blogzine.jp/net/2008/04/70_0e27.html
※戸田=西伊豆の戸田港のことね。
戸田で出会ったその青年の語る話なんだが、アレだ、戸田運送船です。
いつも海で会うと、霧笛を鳴らして合図するんだが。
その人が、もっと若い頃にマリアナ台風で船が沈没したそうで、たまたまカツオを獲りに来ていた
日本の漁船が何十隻も沈んだわけだ。
戸田のカツオ船も三隻沈んだんだが、その青年は流れていた木に捕まって、やっと救助される。
ところが、日本に戻ろうとする途中、
「あの、私を助けてくれました木切れがありまして、それを忘れてきましたので、取りにいきたいのです」
「だめだ。命が助かっただけでもありがたいと思え」
「そうは思いますが、どうしても木切れがほしいのです。うちに持って帰って神棚に供え、
生涯拝もうと思っているのです」
「結構なことだけどな、この船も燃料がないのだよ。お前を引き上げてから三時間以上も経っているのだ」
渋る船長をなんとか説得して、ふたたび四時間かけて遭難現場に戻ってみるが、
もちろん、広大な海で小さな木ぼっくいなんぞ見つからない。
一生懸命捜しました。しかし、そんなものが太平洋で見つかるはずがありません。
強力なライトで海上を照らします。それでも見つかりません。そのとき遠くに何となく光るものが見えました。
「船長、あれは何ですか」
「あれは……、おい双眼鏡を持って来い」
「あれはいかだだな」
「一緒に行ってくれませんか」
「よし行こう」
船をいかだに向けて、突き進んで約二十分走りました。
そこには救命いかだの上に、六人の命が待っておりました。
木切れは見つからなかったけれども、六つの命があったのです。
まぁ、戸田というのはそういうところです。